目的概念と実体概念の社会福祉

 社会福祉の概念は、「目的概念」と「実体概念」に整理される。目的概念は、社会福祉の理念、目的、目標、背景に位置する価値、思想を意味している。それに対して、実体概念は、社会福祉の政策、制度、活動などを意味し、狭義の社会福祉と広義の社会福祉に分類される。狭義の社会福祉は、社会福祉六法を代表とする各種の施策、制度、サービスのことである。狭義の社会福祉に関しては、1950(昭和25)年の社会保障制度に関する勧告(50年勧告)では「社会福祉とは、国家扶助の適用を受けている者、身体障害者、児童その他の援護育成を要する者が自立してその能力を発揮できるように、必要な生活指導、更生補導その他の援護育成を行うこと」と社会福祉を定義している。広義の社会福祉は、人々の福祉を増進する施策全般を包括した概念であり、社会保障制度や雇用、住宅、教育などの制度を含める。社会保障制度については、先述の社会保障制度に関する勧告(50年勧告)で「社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥ったものに対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もって全ての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。」と定義された。

社会福祉の概念図

 「社会保障制度」は、先述の通り広義の社会福祉に属する言葉であるが、社会保障は、社会福祉の上位概念として位置づけられる場合と、並列する概念として位置づけられることがある。上位概念としての社会保障は、さらに、社会保険、社会福祉、社会手当、公衆衛生などを構成要素とする場合と、社会保険、公的扶助、社会手当などの所得保障(現金給付)に限定する場合がある。並列概念としての社会保障は、社会保障が社会保険に限定されることが多い。上位概念としての社会保障を用いて、社会保障を「広義の社会保障」と「狭義の社会保障」に分類し、(狭義の)社会福祉との関係性を位置づけると次の表のようになる。

社会保障制度の体系からみた狭義の社会福祉

社会福祉の領域とアプローチの固有性

 社会福祉の領域としての固有性は、独自性、先導性、補充性から構成される。独自性は、社会福祉がリスクに直面している、あるいはその恐れのある個人や家族を保護し支援するという性格にある。別の表現を用いると、個人や家族のもつ機能を促進、補充、代替する、といえる。先導性は、一般社会サービス(「社会サービス」とは後述する社会政策を構成する要素のこと)が成熟するまでその機能を代行することである。これは、新たな問題に対する社会サービスが形成・成熟するまでの期間に、先導的及び開発的に対応するものである。補充性は、一般社会サービスが十分に機能していない場合や、取り残された問題に対応することで、一般社会サービスの機能を促進、あるいは補充する機能のことである。

 社会福祉のアプローチとしての固有性は、個別性、包括性と総合性、媒介性と調整性から構成される。個別性とは、利用者の個別的な属性(年齢、性別、心身の状況、家族構成、住環境、地域環境など)に留意し、個別的、定性的に対応することである。包括性と総合性とは、利用者の衣食住、健康、趣味、社会的なつながりなどの相互に影響し合う分節をとその全体に着目し対応することを指している。媒介性と調整性とは、社会福祉がニーズの解決や軽減、緩和のために他の社会サービスを積極的に活用し、複数の社会サービスの間をとりもち調整することにある。

福祉政策の位置づけ

 福祉政策は、社会政策と社会福祉政策の中間に位置する概念である。社会政策は、イギリスやアメリカでいうソーシャルポリシーに相応する言葉であり、社会保障制度や雇用、住宅、教育などの制度を含む人々の福祉を増進するための政策であり、広義の社会福祉に対応する。一方、社会福祉政策は、低所得者福祉、介護保険制度を含む高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉、母子及び父子福祉、地域福祉など領域とする政策のことであり、狭義の社会福祉に対応する。この2つの政策の概念の中間に位置する福祉政策は、社会福祉政策を軸にしながら他の社会政策と連絡・調整・連携・協働を図りつつ展開される政策である。

 福祉政策は、2つのレベルで展開される。1つ目は、政策策定、制度設計のレベルである。いくつかの社会政策を構成する要素(社会サービス)との連絡・調整・連携・協働を前提に政策を策定し、制度を設計する。2つ目は、実践活動、職業活動レベルである。このレベルでは、多様な一般社会サービスとの連携や協働を通じて援助が展開される。福祉政策において活用される人権擁護・後見制度、保健サービス、医療サービス、雇用・労働政策などの社会サービスは、いずれもそれ自体は社会福祉ではないが、福祉政策を構成する要素として社会福祉の目的や目標の実現に貢献している。